人はこちらに都合が悪いことや他人の短所を見聞きして、ついつい言ったりするもの。しかしそれはしない方がいい、ということわざに「見ざる聞かざる言わざる」という言葉があります。

このことわざをユニークな彫刻で表現したものが『見猿聞か猿言わ猿』です。最近では、iPhoneの絵文字にも表示されるようになり、以前よりも目にする機会が増えました。

今回は、この『見猿聞か猿言わ猿』という言葉や彫刻の発祥や、日光東照宮における三猿についてご紹介します。また、実は4猿だとも言われているようですが…

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『見猿聞か猿言わ猿』の発祥は日本ではない?


見ざる聞かざる言わざる」ということわざは、最後の「さる」という一節が3匹の猿との組み合わせが上手くはまりすぎているため、この言葉が日本発祥だと考える人は多いようです。

しかし、実は世界中に似たことわざがあるのです。
例えば英語では、以下のように言われています。

“see no evil, hear no evil, speak no evil”

また、 “Three Wise Monkeys”という言葉は、三猿を表す言葉としてもよく知られています。

ことわざの起源については、はっきりとしたことは分かっていませんが、一説によると孔子の論語が始まりなのではないかと言われています。論語の中では、「礼節に背くことに注目したり、耳を背けたり、言ったりしてはならない」というマナーを表す意味で言及されています。

そして、このことわざを猿で表した「見猿聞か猿言わ猿」の発祥も、正式な事は分かっていません。ただし、こうした三猿のモチーフ自体は、古代エジプト時代の遺跡やアンコールワットからも発見されており、かなり古くから存在したアイデアであることが分かります。

このことわざは、世界各国で見られる普遍的な教えなのかもしれませんね。

日光東照宮にある『見猿聞か猿言わ猿』の彫刻について解説!


ところで、この『見猿聞か猿言わ猿』と言えば、世界遺産でもある日光東照宮の彫刻を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。

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実は日光東照宮には、猿を題材にした8枚の浮彫があり、この『見猿聞か猿言わ猿』はその中の1つに過ぎません。東照宮の8つの彫刻は人が子供を産むまでの人生を表しており、『見猿聞か猿言わ猿』の作品は”独り立ちする子供に対する訓示”という意味合いが込められています。

日光東照宮の三猿は明治時代になると、海外にも紹介され世界で最も有名な三猿像の一つになりました。この彫刻は日光東照宮の境内にある「神厩舎」という建物の下に彫られてあるので、訪れる際は見に行くのもいいかもしれませんね。

余談ですが、この三猿を含めた日光東照宮の彫刻の多くは、作者が分かっていません。建物を建設する際に集められた大勢の彫刻師の一人だという事が伝わっているのみで、特定の個人の名前は明らかになっていないのです。

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見猿言わ猿聞か猿には「4猿」がいた!?


先程、「見ざる聞かざる言わざる」の発祥が孔子の論語にあるという事を解説しました。しかし実は、この論語の一節には続きがあるのです。

それは、「礼に背くことはしてはならない」という教えです。

そして、あまり知られていませんが、四匹目の猿も存在するのです。


この猿は四番目ということで「四猿(しざる)」と言われています。この猿は股間に手を当てている事から、「浮気をしない」いうニュアンスがあり、中国では基本的に4匹の猿で1セットという事になっています。

つまり本来は、「見ざる聞かざる言わざるしざる」という事になるのです。

しかし、日光東照宮にある猿は3匹ですよね。その理由ですが、股間に手を当てた四猿の姿はあまりに情けなく、見るものが失笑してしまうような姿のため、猿の像は三匹であることが多いということです。また、こうした品の無い像を東照宮に置くのは、祀られている徳川家康公に失礼ではないか?といった背景があって、祀るのは3猿に留めたと言われています。

この記事のまとめ


見猿聞か猿言わ猿』の奥深さに驚いたのではないでしょうか。
ここまでの説明を以下にまとめます。

・ことわざの「見ざる聞かざる言わざる」の歴史は古く、孔子を発祥とする説もある
・ことわざと猿のモチーフの組み合わせは、世界共通
・日光東照宮の三猿は、8つある彫刻のの2つ目
・4匹目の猿「四猿(しざる)」も存在する
・四猿は股間に手を当て、姦淫してはならないという意味


人生に大切なことを伝えることわざは世界共通なのです。
はるか昔からことわざと猿がセットで世界中に伝えられたことも興味深いですね。

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