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和歌の意味を読み解いていくと、そこに歌い手の想いが込められていることが分かります。

故郷を思う心や、幼い頃の思い出、美しい情景への感動に、恋心。時代を超え、歌い手が感じた想いを感じられる。それが和歌の面白いところではないでしょうか。


特に恋する想いを詠んだ和歌は、どこか現代の私たちにも通じるところがあったりします。
そこで今回は、恋する心を詠んだ有名な恋愛の和歌を5首ご紹介してみたいと思います。
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恋の和歌(1)小野小町が詠んだ切ない片想いの和歌


恋ひわび しばしも寝ばや 夢のうちに 見ゆれば逢ひぬ 見ねば忘れぬ

作者は、「世界三大美女」の1人ともされる小野小町です。
六歌仙であり三十六歌仙の一人ある彼女は、恋の和歌の歌人としてカリスマ的存在でした。
また、著名な女流歌人の称号でもある女房三十六歌仙の一人でもあります。


それでは早速、小野小町が詠んだ和歌の意味を読み解いてみたいと思います。

恋しく想うことに疲れたから、少し眠りたいの。
もしかしたら夢であの方に出会えるかもしれないし、
夢に見れなくても、その間は、この疲れ果てるほどの恋しさを忘れていられるもの


夢での出会いをテーマにした恋の和歌は、なんとも儚く美しい雰囲気ですね。
また、小野小町は、他にも同テーマでの和歌を数多く詠んだことでも有名です。

因みに、こちらの「恋ひわび〜」の和歌は、「新千載和歌集」の恋歌の項に収録されていますが、「夢」をテーマにした他の恋歌は、「古今和歌集」などに収録されています。

恋の和歌(2)儀同三司母が和歌に詠んだ恋愛の不安


忘れじの 行く末までは 難ければ 今日を限りの 命ともがな

作者は、儀同三司母(ぎどうさんしのはは)という人物です。
当時から歌人としても有名だったようで、女房三十六歌仙の一人にも選ばれています。

本名を高階貴子(たかなしのきし)と言う彼女は、関白だった藤原道隆の奥様であり、一条天皇に嫁いだ定子のお母様です。蛇足ではありますが、この定子の女官が清少納言でした。


そんな高階貴子こと、儀同三司母の和歌の意味を読み解いてみたいと思います。

いつまでも忘れないと言う貴方の言葉はとても嬉しいけれど、
そんな遠い未来のことなど、どうなるか分からないものです。
だから、今のこの幸せな気持ちのまま、命尽きてしまえばいいと思うのです


不安に揺れる乙女心。これもまた、恋愛における想いの和歌ですね。
永遠の愛を信じたいけれど信じきれない、こうした現実的な部分は女性ならではでしょうか。

なお、こちらの「忘れじの〜」の和歌は、「古今和歌集」の恋歌の項の他、かの「百人一首」にも選ばれているとても有名な恋の和歌です。

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恋の和歌(3)平兼盛が詠んだ初々しい恋の和歌


しのぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで

作者は、三十六歌仙の一人である平兼盛です。百人一首んの「君がため〜」の和歌でも有名な光孝天皇のひ孫としても知られている人物で、同じ三十六歌仙に選ばれている壬生忠見との和歌の勝負で、圧勝したという逸話が知られています。


それでは、そんな平兼盛の和歌の意味を読み解いてみたいと思います。

誰にも知られないよう秘めていた恋ですが、
どうやら私の恋は、恋しているのかと人に問いかけられるくらい、
顔色に出るようになってしまったようです


頑張って普通にしてみたのに、恋してることがバレてしまうくらい平常通りではいられない。
そんな初々しい恋の雰囲気が伝わってきます。

なお、こちらの平兼隆の和歌は「拾遺和歌集」の恋歌の項に収録されている他、儀同三司母の和歌と同じく「百人一首」にも選ばれている有名な和歌です。

恋の和歌(4)藤原道信朝臣が詠んだ恋い焦がれる心


明けぬれば 暮るるものとは知りながら なほうらめしき 朝ぼらけかな

作者は、藤原道信朝臣(ふじわらのみちのぶあそん)という人物です。中古三十六歌仙の一人として知られている藤原道信は、幼いころから和歌に秀でた人物だったそうで、人柄も良く、奥ゆかしい性格の持ち主だったとされています。けれど、周囲の期待も空しく、二十二歳の若さで亡くなってしまいました。


そんな藤原道信朝臣の和歌の意味がこちら。

夜が明ければ、また暮れて貴方に会える夜になるのは分かっているのです。
それでも、貴方と別れなければならない夜明けは、どうしても恨めしく思ってしまうのです


どれだけ好きなんだよ!」とつい言いたくなる和歌ですね(笑)

因みに、こちらの和歌は「後拾遺和歌集」に収録され、「百人一首」にも選ばれています。

恋の和歌(5)藤原義孝が詠んだ愛情深い和歌


君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな

藤原義孝という、中古三十六歌仙の一人が詠んだ恋の和歌です。
とても仏教への信仰が篤かったそうで、二十二歳の若さで亡くなるその瀕死の際には、自分で読経するために一度生き返るので、普通に葬儀を進行しないで欲しいと母親に頼んだという逸話がある面白い人です。


そんな藤原義孝の詠んだ和歌の意味を読み解いてみたいと思います。

貴方のためなら命も惜しくはないと思っていましたが、
貴方を目にすれば、貴方に会うために、
できるだけ長く生きたいと思ってしまうのです


恋が実るまでは、この恋のためなら命を懸けると思っていたけれど、実ったら実ったで、もっと一緒にいたいと思ってしまった、という恋の和歌。

ただ、藤原義孝が二十二歳で亡くなったというのを知ると、どこか切なさも感じてしまいます。

この「君がため〜」の和歌は、「後拾遺和歌集」に収録されている他、上記の和歌と同様「百人一首」にも選ばれているので、どこかで見た事がある方も多いかもしれません。

※関連記事:夏を詠んだ和歌で有名な作品を5つご紹介。

この記事のまとめ


恋をテーマにした和歌で有名な作品を5つご紹介しました。

片想いの切なさや、両想いだからこその不安、焦がれる想いなど、さまざまな恋心が込められた恋愛の和歌。そこに込められているのは、恋する人の想いです。

人が人に恋をする。それは、時代に関係なく通じるものではないでしょうか。

こうした和歌を通し、時代を超えて残された想いを感じてみるのもいいかもしれませんね。

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