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俳句には、必ず一つは季節を感じさせる言葉を含めるという決まりがあります。

それは、「季語」といい、季節によって様々な季語が存在し、またその季語によって俳句に込められた意味や印象も変わってきます。俳句とは、季節を味わうように楽しみ詠むもの。そんな俳句が、過去現在を通し、日本には数多く残されています。

そこで今回は、数多くいる俳人の中から、特に有名な俳人が詠んだ春の俳句をその意味と共に解説してみたいと思います。
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春の俳句(1)松尾芭蕉が詠んだ清々しい春の俳句


梅が香に のっと日の出る 山路かな

作者は、日本を代表する俳人・松尾芭蕉です。
江戸時代前期に活躍した芭蕉は、代表作「奥の細道」でもその名が知られています。また世界的にも有名な俳人であり、その作品は、現在でも多くの催しなどで紹介されています。


そんな松尾芭蕉が詠んだ春の俳句の意味を、読み解いてみたいと思います。


薄暗い夜明けに山道を歩いていたら、
どこからともなく漂う梅の花の香りに誘われるよう
太陽がのっと昇り現れた



季節は、春先で、時刻は夜明け前。
さすがは松尾芭蕉。爽やかな情景が目に浮かぶような美しい俳句です。

春の俳句(2)小林一茶が詠んだ朗らかな春の情景


春雨や 猫に踊りを 教える子

作者は、江戸時代を代表する俳人の一人、小林一茶です。一茶は小さな動物をこよなく愛したと言われており、彼の俳句には多くの小動物、特に「猫」がよく登場しています。


そんな小林一茶の詠んだ春の俳句の意味を見てみましょう。


しとしとと降る春の雨。
それなら出かけることなく、猫と遊ぼうか



春に降る雨というのは、どこか明るい雰囲気を感じさせます。また、猫が登場することで、なんとも朗らかで可愛らしい印象になっている気がしませんか。

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春の俳句(3)柔らかな雰囲気を感じさせる与謝蕪村の春の俳句


春雨や ものがたりゆく 蓑と傘

江戸時代中期の俳人、与謝蕪村がこの句の作者です。
松尾芭蕉に並び称される、有名な俳人として知られています。


そんな与謝蕪村の詠んだ春の俳句の意味を、読み解いてみましょう。


春の雨降る中、蓑をまとった人と、
傘をさした人が語り合い並び歩いていくよ



ここで面白いのが、蓑をまとう人と傘をさした人という二人の人物が登場しているところです。
この時代ですから、もしかしたらこの二人は身分が違うのかもしれません。もしかしたら異性だったりするのかもしれません。

けれど、句に詠まれている、仲良く語り合いながら歩いていくさまは、なんとも微笑ましく温かい雰囲気を感じさせてくれます。

春の俳句(4)正岡子規の故郷への想いを込めた春の俳句


春や昔 十五万石の 城下哉

正岡子規は、明治時代の俳人、正岡子規が読んだ俳句です。子規は松尾芭蕉を尊敬し、小林一茶や、与謝蕪村を好んで研究していたそうです。また、日清戦争時には、記者として従軍した経験を持つ一面も。


そんな正岡子規の詠んだ有名な春の俳句の意味を読み解いてみます。


江戸時代には江戸幕府の親藩であった松平家。
その栄華を懐かしく思い起こさせる松山の城下よ



日清戦争時、記者として従軍することを決めた正岡子規。その正岡子規が中国へと向かう前、一時、故郷の松山に帰省した際に詠んだ俳句だそうです。

正岡子規は、三十四歳の若さで亡くなります。生まれたときから病弱でしたが、一番の原因は、二十二歳の時に発覚した肺結核。しかも、周囲に反対された日清戦争への従軍で、その病状を悪化させてしまいます。この句を詠んだ際にはすでに、当時、不治の病とされた肺結核を患っていました。しかし、この俳句から伝えられる印象に、絶望感や暗いところはありません。

生まれ育った故郷の情景を見ながら、その過去の栄光に想いを馳せた正岡子規。もしかしたら、自分の身と重ねていたのかもしれませんね。

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春の俳句(5)穏やかな春の情景を詠んだ中村汀女の俳句


たんぽぽや 日はいつまでも 大空に

昭和を代表する女流俳人、中村汀女が詠んだ句です。彼女の作品は、日常の何気ない風景を素直に、叙情的に詠う作風で知られています。

そんな中村汀女の春の俳句の意味を、個人的に読み解いてみました。


道端に咲くたんぽぽの花と大空を見ると、
変わらず長く続いてきた永久にも近い日を感じさせてくれるようね




「たんぽぽ」というのは、目立つ花ではありませんが、誰もが慣れ親しんだ花でもあります。

春の日常の風景に必ずある「たんぽぽ」。そして、広く青い大空。
なんとものどかで平穏な春の情景が思い浮かびます。

※参照:夏を詠んだ有名な5つの俳句とその意味をご紹介。

この記事のまとめ


春を題材にした有名な5つの俳句を、その意味と共にご紹介しました。

俳句というのは、季節を詠み込んで作り上げるものです。それはつまり、季節を味わい、楽しむことができていなければ、意味を為す俳句を詠むことが難しいとも言えるでしょう。

俳句を究めるためには、それなりの努力が必要だと思います。けれど、個人的には、俳句とは、季節を楽しむための言葉遊びではないかとも思っています。難しいことよりも、先ずは季節を味わい、自分が感じた想いを表す事の楽しさを味わってみるのがおすすめです。

よろしければ、ここで解説した有名な俳句を通し、俳人たちが楽しんだ春を味わってみてはいかがでしょうか。

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