あなたは日本三景という言葉を聞いた事はありますか?
古くから景勝地として名高かった「陸前(現在の宮城県)松島」「丹後(現在の京都府北部)天橋立」「安芸(現在の広島県西部)宮島」という場所の総称を「日本三景」と呼びます。
太平洋、日本海、瀬戸内海それぞれの海と木々の緑がつくり出す景観は多くの文人たちを魅了し、俳句や和歌、短歌などの題材になった事でも知られています。
今回は、日本三景がある場所やそれぞれの特徴についてご紹介します。
松島の場所や展望地、その周辺の観光地について
まずは1つ目、松島の特徴について見ていきましょう。
松島がある場所は、宮城県の宮城郡松島町です。太平洋沿岸、松島湾の周辺と湾の内外に点在する大小260あまりの島を総称して「松島」と呼びます。海岸線が複雑に入り組んだリアス式海岸がさらに沈み込み、沈まなかった谷の山頂が海上に残り、島が点在する景観を生み出しているのがこの場所の特徴ですね。
松島港や塩釜港を発着する遊覧船で、松島巡りを楽しむことができます。江戸時代、松尾芭蕉も『奥の細道』の旅で、塩釜港から松島港まで船で渡っています。松島のあまりにものすばらしさに、芭蕉が「松島や ああ松島や 松島や」と詠んだという逸話がありますが、この句は後世の創作といわれています。ただ、その絶景に句が出てこなかったのは事実のようです。
また、松島の展望地についても見ていきましょう。1つ目は大高森です。松島湾の東に位置する宮戸島の山で、眼前に広がる奥松島の島々から、遠くは奥羽山脈まで見渡せ、ここからの松島の景観は、まるで箱庭のような感じです。
2つ目は大仰寺。松島湾の背後、富山にある大仰寺の庭から手前に松島湾、奥に奥松島が見渡せますよ。3つ目は扇谷という、双観山の背後にある高地です。ここから見る松島湾の入り江が扇のようであることから、「扇谷」の名が付いたと言われてます。
そして最後の多聞山は、松島湾の西に位置する多聞山から見る景色です。多聞山は代ヶ崎浜の断崖にあり、太平洋から波が打ち寄せては砕ける雄大な景色が眺められます。塩釜湾・松島湾・奥松島と松島の全体がよく見えるのが特徴です。
また、松島の周辺の観光地としては、伊達家ゆかりの瑞巌寺や円通寺、平安時代、蝦夷征伐で功績のあった征夷大将軍・坂上田村麻呂創建と伝わる五大堂などが点在しています。
天の橋立の場所や展望地、その周辺の観光地について
続いて、天の橋立の特徴についてご紹介します。
「天の橋立」は、日本海に面した宮津湾と西側にある内海の阿蘇海を隔てている砂州です。今の京都府宮津市の文殊という所にあり、付近の宮津湾の西側沿岸から砂礫が海流によって運ばれ、阿蘇海の海流とぶつかってほぼまっすぐに堆積し、橋のような景観が生まれたと考えられています。
長さ約3.6km、幅は約20m~170mあり、約8000本の松が生えています。松の多くは人の手で植えられたのではなく、自生しているもの。松林の中は“自然の道”になっていて、歩くことができます。
平安時代、小式部内侍が詠んだ「大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみもみず 天橋立(大江山を越えて生野へ向かう道すら言ったことがありません。母・和泉式部がいる天の橋立へは行ったこともなく、母からの手紙もまだ見ていません)」は百人一首にも選ばれているので、耳にしたことがある人も多いと思います。
また、室町時代の僧・雪舟が描いた水墨画「天橋立図」も有名ですね。
天に上る龍に例えられる天の橋立。
湾内の4か所ある展望地から、それぞれ違った“上り龍”を見ることができます。
1つ目の笠松公園は、天の橋立北側にある成相山中腹の公園です。「一」の文字を斜めから見たような景観から「斜め一文字」と呼ばれています。股の間から天の橋立を天地逆さまに覗く「股のぞき」は、この地が発祥だと言われています。
2つ目の天橋立ビューランドは、天の橋立南側、文殊山の山頂にある展望施設です。
ここからの眺めは、まさに“龍が天に上る”様子そのもの。
この事から、「飛龍観」と呼ばれています。
3つ目の大内峠一字観公園は、宮津湾西側の内陸部、大内峠にある公園です。
ここからは天の橋立が横一文字に見え、その眺めをは「一字観」と呼ばれています。
そして最後の雪舟観展望休憩所は、天の橋立の東側、獅子崎稲荷神社の背後にある展望所です。天の橋立がまっすぐに横たわっているように見える様子が、雪舟の「天橋立図」の構図と似ていることから、ここからの眺めは「雪舟観」と呼ばれています。
また、天の橋立の周辺の観光地としては、雪舟の「天橋立図」にも描かれている智恩寺や、天照大神が伊勢に収まる前にいたとされる「元伊勢信仰」の地として知られ、多くの国宝や重要文化財を持つ籠神社、笠松公園からさらに山を登ったところにある成相寺といった場所が知られています。天の橋立を訪れた際は、ぜひ一緒に巡りたいスポットばかりです。
宮島の場所や展望地、その周辺の観光地について
そして最後の、宮島の特徴について解説します!
宮島は穏やかな瀬戸内海の広島湾に浮かぶ、周囲約30kmの島です。正式な名称を厳島といい、古代から島そのものが信仰対象とされ、人々の崇敬を集めてきました。所在地は広島県の廿日市市宮島町です。
島の中心には、平清盛が整備したことで有名な国宝の厳島神社があります。潮が満ちると、大鳥居と社殿が海上に浮かびあがる独特の景観を生み出します。社殿は平安時代の寝殿造を応用し、雅びな風情を見せてくれます。また、嚴島神社を中心とした門前町の背後には、手つかずのままの自然が残る弥山がそびえます。厳島神社と弥山は世界遺産に登録されています。
そして、宮島の展望地を2点ご紹介します。
まずは厳島神社大鳥居・社殿です。干潮時は歩いて大鳥居をくぐったり、社殿の床下も観ることが出来ますよ。満潮時は船で参拝がおすすめ。昼は人力で進む櫓櫂船、夜はエンジン船が運航しています。なお、厳島神社の正式な参拝スタイルは海上参拝となっています。
2つ目の展望地は弥山。これは厳島神社の背後にある標高535mの山で、人の手が殆ど加わっていない原生林が広がっています。3つの登山ルートがあり、所要時間は約1時間半~2時間ほど。ふたつのロープウェーを15分ほど乗り継いで山の途中まで登り、残りは30分ほど歩いて頂上へ向かうことも可能です。頂上の休憩所は360度のパノラマビューが楽しめ、眼下には瀬戸内海の島々を望むことが出来ますよ。
また、宮島の周辺の観光地としては、厳島神社と関係の深い大聖院や大願寺の他、厳島神社の参道沿いに物産店などが軒を連ねる表参道商店街、江戸時代につくられた参道で、往時の面影が残る町家通りなどが知られています。厳島神社のついでに、散策にぴったりのスポットばかりですよ。
この記事のまとめ
このページは日本三景の場所をはじめ、それぞれの展望地、周辺の観光地について触れながら、松島、天の橋立、宮島の違いについてご紹介しました。
太平洋、日本海、瀬戸内海という性格の異なる海に、特色のある景観を見せてくれる3つの景勝地。日本が海に囲まれた豊かな国だと、改めて教えてくれるスポットばかりです。周辺にも様々な観光地がありますので、この3つのどれかを次の旅行先にしてみてはいかがでしょうか?